営業は障害走:前編

 自己流のやり方で、営業とも言えない営業をしていた頃の、振り返るのも恥ずかしいエピソードです。
 当時は、分譲マンション事業部を立ち上げて間も無く、営業マンは部長の私と、他事業から異動してきた部下の二人だけでした。

 内覧会に来場されたお客様の接客に、経験の浅い部下の営業マンが当たります。
 購入意欲も高く、そこそこ話は盛り上がるのですが詰めが甘く、「家族と話し合って検討してみます。」という台詞を残して帰る背中を、笑顔で見送らんとする部下。

 すぐさまお声がけをして引き留めました。
 お客様の言葉を真に受けてはいけません。
 この業界で、「検討します」は「買わない」とほぼ同義語です。

「物件は気に入って頂いたようですね。
 ただ御検討中に、折角気に入ったお部屋が埋まってしまう可能性もあります。
 お申込み頂ければ、一週間は部屋押さえができます。
 無くなるかもしれないという不確かな状況よりも、お部屋押さえしてからじっくり検討された方が良いでしょう。
 勿論、お申込み時点では、一円のお金も必要ありません。
 取りあえず、お申込みされませんか?」

 当然のことながら、この「魔法のトーク」によって申込に至ります。
 お客様がお帰りに成った後、部下は羨望の眼差しで呟くのです。

 「いやあ部長、流石ですね。勉強になりました。」

 上司の威厳を見せつけることのできた私は、部下からの甘言にも胸を張ります。
 ここまで来ますと喜劇以外の何ものでもありません。
 これを、新三大タブー営業の一つ、「とりあえず申込」とさせて頂きます。
 
 悲しいかな未熟な私はこの時、これがダルビッシュのシンカーの如く、はたまた本田圭佑の無回転シュートの如く、最上級のクロージングトークであると、大いなる勘違いをしていたのです。  つづく
スポンサーサイト

コメント

非公開コメント

プロフィール

Hideo Matsuoka

Author:Hideo Matsuoka
・生年月日 昭和37年10月30日

・好きな言葉 
今日は残された人生の最初の一日

・信条「先憂後楽」

・尊敬する人 
稲盛和夫 西川広一 松下幸之助

・資格 ①宅地建物取引士
    ②建築2級施工管理技士
    ③マンション管理業務主任者
    ④防火管理者
    ⑤少額短期保険募集人
    ⑥損害保険募集人
    ⑦損害保険商品専門総合
    ⑧不動産キャリアパーソン
・趣味
 劇団AUGAHANCE初代代表
 主に脚本・演出を担当

・経歴 
 中卒後、大工・石工と職人道を歩む
 平成2年 
 ㈱中岡組 (ジョーコーポレーション)入社
 マンション担当役員→常務執行役→管理会社代表を歴任
 平成21年 ㈱NYホーム起業

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
FC2カウンター
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR