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Win-Win-Win:中

 「賃貸物件は、古くなれば入居率も悪化する。
  サブリースによって建築を取り、利益を得、新しい物件を注入して入居率を改善させる。
  即ちサブリースは、増やし続けていかないと成立しないビジネスモデルだ。」

 自転車操業を是認するかの様な発言に、現場人として大いに抵抗を覚えたものの、実は一理あります。
 賃貸マンションメーカーの歩む道は、二つに一つです。

 ① サブリースを武器として、建築受注を取り続ける
 ② 将来のリスクを避け、サブリースは絶対やらない

 一旦サブリースに手を染めた会社は、雨中の高速道路同様にブレーキが踏めません。
 自らがブレーキを踏まなかったとしても、失速すればアウトです。

 業界大手の某社は、サブリースで業績を伸ばし続けました。
 往時の建築受注は年間数千億円、サブリース戸数累計数十万戸、入居率90%超。
 建築の粗利が50%近く見込める上に、ストック収入が安定して入ってきます。
 著明なタレントを使った派手なTVCMも大量に流し、盤石な経営かと思われましたが、リーマンショック以降、様相が一変しました。 
 
 今や、建築受注はピーク時の数十分の一、入居率は損益分岐点と言われる80%前後に低迷しています。
 建築受注による収入が見込めず、既存物件が日一日と陳腐化していく中で、この先十年、二十年、三十年というサブリースを維持できるのかという疑問を抱いているのは私だけではないでしょう。

 そもそも、新築賃貸住宅の適正供給戸数は、年間20万戸と言われています。
 ところがここ十数年の供給戸数は、毎年50万戸前後です。
 その差が年々積み上がり、莫大な住宅ストックの余剰につながっています。
 
 賃貸住宅の空室が増えたのは、人口減少のせいではありません。
 核家族化の進行によって、寧ろ世帯数は増えています。
 単にそれ以上に創り過ぎたから、住宅が余っているのです。

 豊作であれば価格が下がり、不作であれば価格が上がる・・・市況価格は、需給バランスで決まります。 
 例えば、30年前のキーウィは、希少であったが故に高値がついていました。
 「儲かる」と思い、各農家が挙って作り始めたことで、需要を超えた供給が成され、今では値が付きません。
 やがて、「儲からない」農家は、次々離脱していくことでしょう。
 それが市場の原理です。

 ところが、賃貸住宅だけは摩訶不思議なことに、空室が増大し供給過剰が明らかにも関わらず、雨上がりの筍の如く建ち続けました。
 その肥やしは、アクセルを踏み続けるサブリースメーカーの強い営業です。
 
 通常であれば、近隣のアパートの入居率が悪ければ、地主も躊躇します。
 ところが、「入ろうが入るまいが一括借上げですから」という営業トークに、ついほだされてしまうのです。 
 サブリースメーカーの売っている商品の実態は、アパートやマンションではありません。
 極めて高いリスクがヴェールに覆われた、金融商品なのです。         つづく
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Win-Win-Win:上

 今期は、サブリース(一括借上)を積極的に推進しています。
 当然に、サブリースは諸刃です。
 上手くいけば大きな利益を生みますが、見込みが甘ければ長期的に多額の損失を背負いこむことになります。
 いわゆる、ハイリスク・ハイリターンの事業です。

 混同する方も多いのですが、サブリースと家賃保証は違います。
 サブリースは大家様から一定額で借り上げて、第三者に転貸する契約です。
 従って、定額を下回れば損失、上回れば儲けが出ます。
 
 一方家賃保証は、賃料が一定額を下回った場合にのみ、大家様に損失を補填することを約束するものです。
 最近では少なくなりましたが、ひと頃は建築受注の見返りとして提示する会社が結構ありました。
 物件が古くなればなるほど、数が増えれば増える程、損失リスクが高まるのは自明の理でしょう。

 前職では、家賃保証こそ無かったものの、1,000戸超のサブリースを抱えていました。
 殆どが、満室賃料の9割での借り上げです。
 つまり、賃料が一割以上下落するか、空室率が一割以上になった段階で逆ザヤとなります。

 将来のリスクを鑑みながら、「D社やL社同様にサブリースしてくれるのならば・・・」というオーナー様の要求を無碍にもできません。
 消極的な姿勢を見透かされますと、「お宅が引き受けられないものを、うちに押し付けようというのか?」という論理矛盾にもなります。

 入居者とオーナー様の間に立ちニュートラルな姿勢でお役立ちする、今のスタンスで振り返りますと、建築受注欲しさに長期のサブリースを引き受けるのは、やはり無謀でしょう。  
 10年前に、今の空室率や家賃の下落状況を言い当てた人は居ません。
 ましてや、サブリースを引き受ける企業の生存率すら危うい、20年30年の長期保証となれば、実質空手形であることを互いに覚悟しておく必要があります。

 数年前、経営幹部の集う会議中、サブリースについてネガティブな見解を述べた自分に対して、財務担当の役員が、冷水を浴びせる一言を発しました。         つづく

盲亀浮木の比喩

 普段、何気無く使っている「ありがとう」という感謝の言葉は、元々禅語です。
 滅多に無いこと・・・即ち「有難い」から来ています。
 タイトルは、仏教の経典「雑阿言経」の中の一節です。

【ある時、釈尊が弟子に尋ねた。
「例えば、大海の中に一匹の目の見えない亀がいて、百年に一度だけ浮かび上がる。
 大海には、真中に小さな穴の開いた、一本の流木が漂っているとしよう。
 百年に一度の時を迎え、盲目の亀が浮かび上がる時、その流木に行き当たり、真中の穴から首を出す。
 果たして、そんなことが有り得るだろうか?」
 十大弟子の一人、阿難は「有難い(ありえませんよ)」と答えた。
 すかさず釈尊は返す。
「その有り得ないことが起こるのだ。
 それが今、皆がこの世に生まれ、生きているということなのだよ。」】

 人間の命は、その存在自体が奇跡です。
 どんな人間も両親は2人、その両親である祖父母が4人、更にその両親は・・・という風に辿っていきますと、28代遡及した段階で、遺伝子に関わった人は1億人を超えます。
 その1億人もの祖先の営みが、少しでもかけ違っていたら、今の貴方は存在し得ません。
 
 また、父親の体内から数億もの命の源が放たれた瞬間、壮絶な生存競争を勝ち抜いて着床を果たした貴方は、いわばエリート中のエリートです。
 更に四季のうつろう中、リスクを伴いながら母胎で育まれ、出産に際して大きな試練を乗り越え、この世に誕生した命は正に奇跡と言えるでしょう。

 その奇跡の糸が、縦横無尽に幾重にも折り重なって、人の縁を紡ぎます。
 同じ国の同じ県の同じ家に生まれ育った、家族の縁。 
 300万社分の一の確率で共に働く、社員の縁。
 数ある同業他社ではなく我が社とお付き合い頂ける、お客様の縁
 こうして、拙文に目を通して頂ける、貴方との縁。

 これらは全て当たり前ではありません。
 盲亀浮木(もうきふぼく)の如く、本当に有難いことです。

うまい・はやい・やすい

 皆さん「吉野家」という会社をご存知ですか?
 冒頭から、ナイツの塙ばりのボケとお思いかもしれませんが、果たして貴方は本当に「吉野家」を知っているのでしょうか?

 1899年創業、今年で112年目を迎える「吉野家」は、外食チェーン店としては老舗中の老舗です。
 チェーン展開を本格化させたのは今から40年前。
 当時の社長の方針によって、拡大路線へと一気に舵を切りました。
 当時のキャッチコピーは、「はやい・うまい・やすい」。
 注文から配膳まで僅か15秒というスピードが、高度経済成長下のビジネスマンの支持を受けます。

 配膳だけでなく、出店速度も急速です。
 日本中に「吉野家」の看板が上がり、遂にはアメリカへも出店。
 日本の牛丼が、全世界を席巻する勢いでした。

 ところが、1980年120億円の負債を抱え、会社更生法申請。
 この時、アルバイトから昇格して店長を務めていた「安部修仁」氏は、破綻の原因を次の様に分析しています。

「店舗が急増する中、優先順位をお客様ではなく、社内の効率に置いてしまった。
 漬物は生から冷凍に、つゆは液体から粉末に、肉は生からフリーズドライへ・・・効率を追求していくと当然に味が落ちて、お客様が離れてしまう。
 加えて、原価上昇に対応するため、価格を上げてしまった。
 不味くなった上に高くなるのだから、更にお客様離れは加速する。
 いわば吉野家は、つぶれるべくしてつぶれたのです。」

 その後、外食チェーンとして異例の会社更生を成し遂げた「安部修仁」氏は社長に就任します。
 そして、同じ轍を踏まぬとの思いから、キャッチコピーの順番を入れ替えたのです。

 ×「はやい・うまい・やすい」 → ◎「うまい・はやい・やすい」
 
 「味は競争力の生命線。だからこそ、おいしさをトッププライオリティーにおく。」
 近年、「すき家」や「松屋」等、同業他社の仕掛ける値下げ戦争によって劣勢を強いられつつも、安易に低価格路線へと転換しない理由もここにあります。

 経営に浮き沈みや逆風はつきものでしょう。
 経営理念や経営方針は、いかなる事態に陥っても譲れない、企業としてのアイデンティティーなのです。
 

沢山の手間で沢山の笑顔を

 この業界に足を踏み入れた20年前、ある方から教えて頂きました。
 「不動産業の商品は土地・建物ではなく情報だ」
 確かに、売買の情報を一早くお客様に伝えた業者が、手数料配分の優先権を得ます。
 そういう意味において、「情報=商品」という教えは不変の真理でしょう。
 当時と今の最大の違いは、インターネット上で情報が氾濫していることです。
 プロの我々以上に、アマのお客様が情報に精通していることも少なくありません。

 周知の通り、仲介手数料は成功報酬ですから、どれだけ手間がかかろうとも、成約の陽の目を見ない限りただ働きを余儀なくされます。
 私も含め、業者としては「できるだけ少ない手間で、できるだけ多くの報酬を貰いたい」というのが本音でしょう。
 しかし最近、この考えは誤りではないかと思う様に成りました。
 
 ・ニーズの聞き取りが不充分だと、無駄な動きが増えます
 ・媒介契約を事前に交わしてないと、手数料支払時、確実に揉めます
 ・物調・役調をいい加減にしていると、多大な損害賠償リスクを背負います
 ・買側だからと、売側業者の重説を鵜呑みにしていると連帯責任は免れません・・・
 消費者保護のスタンスが鮮明で、指導が厳格化している今日、手抜きは自殺行為です。

 また、別の角度からも、手間を惜しんではならない理由が見えてきます。
 過去を振り返ると、すんなり契約に至ったお客様との縁は、意外に切れ易いものです。
 難しい取引をまとめようと何度も何度も足を運んだり、互いにエキサイトして口論に発展したり、失敗を詫びて頭を下げたり・・・難産の末に成就したお客様との信頼関係は、長い年月が経過しても全く色褪せません。
 「貴方から買ったのだから売る時にも貴方にお願いしたい」
 この言葉は、業界人として至福の喜びです。

 人口減少&不動産価格下落の時代に、旧態依然の成功体験は通用しないでしょう。
 「できるだけ沢山の手間をかけ、できるだけ沢山の笑顔を集める」ことが、これからの不動産業界の繁栄と、社会的地位の向上につながるものと確信しています。

身内や知人に遠慮する偽善

 人脈をつなぐために、定例の会食を月二回開催しています。
 一つは毎月1日に実施している、四半世紀続く40~50代の知人の会。
 もう一つは、毎月第2火曜日に実施している、小学校時代の同級生の会。
 この人脈は、紆余曲折を経ながらも半世紀近く続いています。

 一年毎に歳を重ね容姿や環境が変わり行くとしても、自分にとって生涯大切にしたいコミュニティです。
 また、ここから頂いたご紹介も少なくありません。

・引っ越し後のマイホームの入居募集と管理を任せて頂いた同級生
・娘さんの就職に際して、今治で賃貸契約頂いた知人
・娘さんの専門学校入学に際して、松山で賃貸契約頂いた同級生
・知人の賃貸需要の度に一声かけて、紹介頂ける会食店の店主
・自宅裏の土地を売却するに当たって、相談頂ける同級生
・自分の店の上にあるマンションの、入居斡旋を依頼頂ける同級生

 会社の中で、こうした紹介が最も多いのが社長であるのは当然です。
 しかし、決して社長だから紹介が多いのではありません。
 
 商品とサービスと自社に誇りを持つ人が、信頼に足る付き合いを、裾野広く繋いでこそ、紹介は生まれます。
 「友人や知人にモノを売ってしまうと、対等なスタンスが崩れてしまう」
 「良い時には問題ないが、クレームになったら友人関係にもひびが入る」
 こうした、もっともらしい言い訳も良く耳にします。 
 実際、自分も若い頃には、公私を切り分けたい邪(よこしま)な想いが強くありました。

 その当時、上司から次の様に叱責されて目が覚めます。
 「それはええ格好しぃだ。
 頭を下げてお願いするのではなく、お役立ちによって感謝される様に努力しなければならない。
 トラブルになることが怖くて、身内や友人に勧められないほど自信が無いなら即刻看板を下ろせ!
 身内や友人だからこそ、自分達の力で何とか貢献しようとするのが商売人の姿勢だ。」
 
 ぐうの音も出ない程の正論です。
 それ以来、身内や知人に遠慮する偽善は辞めました。

 かといって、あからさまに商売っ気を出した、売らんかなの姿勢では、逆に信頼を損ないます。
 相手が困った時には手を差し伸べ、慶びの時には心から祝い、悲しみの時には共に泣く・・・そうした思いやりに満ちた、誠実かつ真摯なお付き合いが、結果として紹介の輪を拡げていくことになるのです。

オウムの恩返し

 言うまでも無く、社長や店長といった管理職の仕事は、足らざるを補うこと。
 組織目標を100として、部下の成果が60なら、残り40の数字を作るのが役割です。

 先月、今月と、個人的に七桁の売上をコーディネートしました。
 個人、或いは一店の数字としては、それなりに貢献しています。
 しかし、全社の目標に照らせばそれも、乾いた大地に染み込む夕立ちの様なものでしょう。
 タイトルは、「雑法蔵経」の中にある仏教説話の一節です。

【 一羽のオウムが餌を探し求める内、奥山へと迷い込んだ。
 日が暮れて、あたりが暗くなり、途方にくれていた時、その地の鳥や獣達が出てきて諭します。
 「貴方は道を間違えたのだ。夜も遅く今からでは帰れない。明朝送って差上げるので今夜は泊まりなさい。」
 オウムは、親切に甘えることにしました。
 更に彼らは、美味しい湧水や木の実を振る舞ってもてなしてくれます。
 夜はオウムが寂しくないようにと、周りを囲むようにして、一緒に眠ってくれました。
 翌朝オウムは、皆の見送りを受け、朝日に照らされながら、無事帰りつくことができたのです。

 それから数日後、親切な鳥獣の住む山にふと目を向けると、白煙が立ち上り火の手が上がっています。
 すぐさまオウムは谷川に飛び込み、身体を水に濡らして山に向かって飛び立ちました。
 ところが、途中で水は殆ど落ちてしまい、山火事の上空で身体を振るった時には、僅か2~3滴の水しか落ちません。
 それでもオウムは諦めず、何度も何度も谷川と山を往復します。
 
 この様子を見ていた周囲の鳥達は、オウムの愚行をあざ笑いました。
 「2~3滴の水で、あの山火事を消し止めようというのか? 骨折り損のくたびれ儲けとはこのことよ。」
 オウムは、その言葉にも屈しませんでした。
 「おっしゃる通り、私の持っていく2~3滴の水で、火を消すことは不可能かのしれません。しかし、私が困った時に助けてくれた方達が苦しんでいるのだと思うと、いてもたっても居られないのです。」
 
 微力ながらオウムが水運びを続けていると、一天にわかにかき曇り、大粒の雨がザーザー降り出しました。
 その大雨の前に、さしもの山火事も、たちまちの内に鎮火したのです。
 山の鳥獣達は、オウムの思いが天に通じたのだと、口伝えしていきました。】

 「努力する者を天は見放さない」という教えなのでしょうが、このエンディングは少し物足りません。
 自分がシナリオライターなら、こう書き換えます。

【 最初は嘲笑していた鳥達も、懸命に頑張るオウムの姿を眺める内、次第に表情が変わっていきます。
 一羽の鳥が、オウムに倣って谷川に飛び込みました。
 その行動に背中を押される様に一羽また一羽、次々に谷川へと飛び込んでいきます。
 共鳴する何百、何千もの鳥達が降らす水滴は大雨となり、やがて山火事を鎮めました。】

 一人の百歩よりも、百人の一歩。
 大河の流れも、ひと雫(しずく)の集まりです。

事後の百手よりも事前の一手

 昨日に引き続き、分譲マンションのエピソードです。
 このテーマで綴っていきますと、書けないものも含めてネタは山ほどあります。

 やはり十年以上前、分譲マンション事業部長を拝命して間もない頃の話です。
 この頃の私は、今以上に未熟で、事業部長と言っても事業を統括するだけの力量はなく、主として販売部長の位置づけでした。
 
 分譲マンション事業の肝である土地仕入れは、当時の社長がトップダウンで決済します。
 「千の風になって」をヒットさせた方の出身地である、愛媛県東部の地方都市の中心部に、頃合いの競売物件が出ました。
 社長は即決し、すぐさまグループ会社の社長に委ね、見事落札できた訳です。

 「土地は仕入れたから後は頼む」とバトンを渡されたのですが、ここからが大変でした。
 この土地、排水経路が無いのです。
 汚水も生活雑排水も流せなければ、分譲マンションには成りません。

 一級リスクを抱えたまま、引き渡しの期日に向けて、建築確認申請も施工準備も販売準備も粛々と進んでいきます。
 結論としては、隣地の美容室にお願いし、駐車場の地下に排水管を埋設させて頂くことができました。
 
 この美容室の女性経営者は、なかなか手強くて、若手の現場監督では歯が立ちません。
 事業部長である私自身が日参し、幾度も頭を下げ、見返りの条件を提示し、やっとのことで認めて頂いたものです。

 その当時は自分も若かったので、「足元見やがって」とか「付け込んできやがったな」と、心で舌打ちすることも度々でした。 
 但し、今となってみれば感謝の一言です。
 自分の土地上に他人様の、しかも37世帯分もの排水管を通すということは、その土地にとって大きな瑕疵であり、資産価値を毀損します。

 「いくら頼まれてもダメ」と断られたとすれば、その土地に投じた1億円超の土地代と、準備に掛かった費用は捨て銭です。
 バーターで1000万円要求されたとしても、呑むしかなかったでしょう。 
 
 問題が起きた後、逃げることなく敢然と立ち向かい、何が何でも解決するのだという、使命感・責任感は重要です。
 しかし、問題が起きないように、購入前・仲介前の入口の部分で調査・精査することは、もっと重要です。
 ちょっとした見落としや、判断ミスが、会社をつぶす程の大きなリスクにつながる仕事であることだけは、絶対に忘れてはなりません。

既存不適格建築物

 今から12年程前に前職で事業化した、松山市郊外の分譲マンションにまつわる、少し専門的な話です。
 
 この物件は、市街化調整区域に在って、本来であれば建物は建てられません。
 しかし、都市計画法が施行される前から建物が建っていた敷地については、既存宅地として例外的に建築が認められます。

 ここの底地は駐車場部分と建築部分に分かれていて、建物の建っている敷地が、その既存宅地でした。
 既存宅地は、許可も不要かつ容積率も400%(延べ床面積が敷地の4倍)まで認められていたため、高層建築できるのが特権です。
 ところが2001年の法改正によって、そのエリアに応じた建物しか建てられなくなりました。
 その後の既存宅地の指定容積率は、概ね200%が上限です。

 先述の物件は、その法改正間際の駆け込み物件でした。
 駐車場部分は既存宅地ではなく、建物の建たない純粋な調整区域に当たるため当然、容積率に算入できません。
 現状8階建ての建物が建っていますが、建築面積をそのままに建て替えしようとした場合、4階しか建たない計算の、いわゆる既存不適格建築物です。
 勿論、その内容は包み隠さず、重要事項に織り込んで説明しました。

 更に、境界に関しても問題を孕(はら)んでいます。
 土地取引する際、隣地の方に立ち会って貰い、「このブロック塀の中心が境界ですよね」と、当事者間で合意するのが一般的な境界立会です。
 
 しかし、その場では合意したとしても、錯誤や心裡留保によって「言った言わない」という紛争に発展しかねません。
 また、基準となっていたブロック塀が壊れたり、立ち会った当事者が亡くなった場合に、揉め事の火種となる可能性もあります。
 そうした将来のリスクに対応すべく、境界確認に基づき、土地家屋調査士が正確に測量して作成するのが、確定測量図です。
 
 先述の物件、実は一部境界確定未了の部分があります。
 では、デベロッパーとして不誠実であるか? お客様に対して背信であるか? という論点からすると、決してそうではありません。
 この物件は、旧:住宅金融公庫の優良分譲住宅の摘要を受けていました。 
 当時の基準は、その状態でも優良分譲のお墨付きを与えています。
 境界確定と確認測量図の提出が義務付けられたのは、これから2~3年経過後のことです。

 昨日、土地の売買契約を締結しました。
 時代の流れと共に、より厳格なリスク開示が求められています。
 欧米並みに、医者や弁護士と並ぶ社会的ステイタスを望むならば、相応の知識と覚悟が必要と言えるでしょう。

青い看板と緑の看板

 先日、和田さんと同行して、オーナー様を訪問して来ました。
 そのオーナー様のお宅までは、我が社の松山南店から歩いて行けなくもない、程近い距離です。

 本論に踏み込む前に、名刺をお渡しして自己紹介。
 ところがこのオーナー様、エイブルというブランドが判りません。
 
「エイブルというのは賃貸仲介のトップブランドで、全国的に見ればアパマンと双璧に成ります。
 コンビニに例えれば、ローソンとセブンイレブンの様なものと理解して頂ければ結構です。
 地元では青い看板のローソンが先行していますが、全国的には緑の看板のセブンイレブンがコンビニの代名詞に成っていますよね。」

 いつものトークでご説明差上げました。
 更にショッキングなことにこのオーナー様、目と鼻の先にある我が社の店舗をご存じない。
    
 松山で最も交通量の多い、天山交差点近くの南環状線沿いの目立つ立地に、間口15mの店舗を構え、前面には内照式看板を、屋上には塔屋看板を掲げ、朝は6:00前から出社し、照明を煌々と灯し続けて丸二年。
 
 しかもその方は、この業態に縁も所縁(ゆかり)も無い訳ではなく、入居率の余り芳(かんば)しくない賃貸マンションを抱えていて、我々仲介会社の力を最も必要とされている、ご近所のオーナー様であるにも関わらず、「知らない」のです。
 
 プロダクトアウト(生産者都合に傾き過ぎて市場のニーズから遠ざかってしまうこと)という言葉が過ります。
 認知度・周知度・ブランド浸透度という視点において、我々の思い込みと市場の声は、大きく乖離していたのかもしれません。 
 物調(仕入れ)活動・オーナー様訪問の至らなさと、広告宣伝の力不足を痛感させられました。
 
 開店した当時の原点に立ち返り、基本の活動に今一度取り組む必要性があるでしょう。
 こうして慢心に気付き悔い改めるのが凡人。
 常に初心を忘れない人が天才です。
プロフィール

Hideo Matsuoka

Author:Hideo Matsuoka
・生年月日 昭和37年10月30日

・好きな言葉 
今日は残された人生の最初の一日

・信条「先憂後楽」

・資格 ①宅地建物取引士
    ②建築2級施工管理技士
    ③マンション管理業務主任者
    ④防火管理者
    ⑤少額短期保険募集人
    ⑥損害保険募集人
    ⑦損害保険商品専門総合
    ⑧不動産キャリアパーソン

・経歴 
 雄新中卒業 → 新田高校中退
 大工・石工と約十年職人道を歩む
 平成2年 
 ㈱中岡組 (ジョーコーポレーション)入社
 マンション担当役員→常務執行役→管理会社代表を歴任
 平成21年 ㈱NYホーム起業
 令和2年 ㈱南洋建設 代表兼任
 令和4年 ㈱たんぽぽ不動産起業

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